1週間ほど、君はこっちに帰ってきた。
空港への迎えはいいとのことで・・・僕らは、ひたすら学校で君を待っていたんだ。
数ヶ月ぶりに会う君は・・・何だか、いつもより凛々しく見えて・・・
僕の鼓動は高まっていった。
みんなが、君に駆け寄る中、僕はその場から動かずにそんな様子を見つめていた。
だってそうだろ?
君に触れてしまったら・・・僕は泣き出してしまいそうだと思ったから・・・・・
ささやかな願い
「不二。」
帰り道、僕を呼ぶ君。
1週間のみの手塚の帰りを祝って、タカさんの家でパーティーをした帰りだ。
久しぶりに聞く君の声
その声に誘われるように僕は君の後を追う。
僕の名前を呼ぶことは、一緒に来いとの意味だ。
暗くなり街灯が照らす道をテクテク歩く。
僕の前を行く君は、別れたときより少し大きくなった気がする
・・・身長が伸びたのかな?
「・・・・どうした?」
振り返る君の言葉で、ようやく我にかえる。
「ううん。・・・何でもないよ?」
「・・・・・。うちに・・・泊まらないか?」
「えっ?」
「みんないるけどな。・・・・来い。」
「・・・・珍しいね?」
「ん?」
「いつも、家族が心配するからって泊めてくれなかったじゃない、君。小学生じゃないんだからって・・・いつも思ってたけど。」
「・・・・・・今日は・・・・。」
「・・・・・?」
頬を淡いピンク色に染めながら、僕に近づいてくる。
清楚な瞳
とても・・・キレイだ・・・・
ぎゅっと僕の手を握ってくる大きな大きな手。
手塚の体温が、僕に伝わってなのか・・・僕の頬をも赤く染め上げる。
「・・・・一緒にいたいと思ってな・・・・。」
めったにかけてくれない君の素直な言葉
すごく透き通ったキレイなコトバ
「うん。」
この手をずっと離さないでほしいと思った・・・
君の家までじゃなくて
九州にさえも連れて行ってほしいと・・・・・
でも、そんなの僕の我が儘で
君はそんな僕の言葉できっと困ってしまうから・・・・
心の内に内に秘めておく
だから・・・・
だから・・・・
今日はずっと側にいてよね、手塚・・・・・
「ただいま。」
「おかえりなさい。あら、不二くんいらっしゃい!」
「お邪魔します。」
和風の家
僕の家とは正反対で、ジャパニーズ的なにおいが漂っている。
こんなの僕は嫌いじゃない。
手塚のお母さんは、ニコニコ笑って、僕のお泊りを許可してくれた。
家族もいいけど、友達とも一緒に遊んでいたい時期だものね・・・
そんなことばをポツリをこぼしているのが聞こえた。
お母さん・・・ごめんなさい。
僕は・・・手塚を友達以上に好きなんです。
でも・・・コトバには出しません。
お互いがわかっていればいいことだから・・・・
手塚のお父さんにも挨拶をした。
お父さんの方は、はじめて見る。
手塚とは違って・・・コミカルな感じの方だ。
きっと・・・手塚はおじぃちゃん似なんだな・・・・
手塚のおじぃちゃんを見た瞬間、そう思ったのだ。
夕飯を食べてきてしまっていた僕らは、そそくさと手塚の部屋へ移動した。
何度も来たことのある部屋
されど・・・・
久しぶりに入った部屋・・・・
手塚自身も、久しぶりに自分の部屋へ帰ってきたのだろうけど・・・・
部屋はホコリもなく、とても綺麗だった。
きっと、お母さんが小まめに掃除してくれているのだろう。
いつものように、君は、僕にそこらへんに座れ、と言い
自分はベッドの枕にもたれながら本を読み出す。
これが、君流の愛し方。
そんな様子さえ、懐かしいと感じてしまう。
あぁ・・・それだけ自分は手塚と離れていたんだな・・・・
いつもの僕は、君と同じ空間にいられるだけで幸せで・・・
いつも君の横に座って、一緒にボーっとテニスの雑誌を読んでいたよね?
でも・・・今日は・・・・・
「・・・・不二?どうした?」
本を読んでいる君にそっと抱きついて、胸元に頬を寄せる。
いつもは、こんなことしなかったから・・・・
上の方で、驚く君の声が聞こえてきた。
「・・・・君のにおいがする・・・・。」
「・・・・・・。」
「こうしていていいかな?・・・・君のにおい・・・すごく落ち着く・・・気持ちいい・・・。」
「・・・あぁ・・・。」
頭に君の手の感触を感じる。
安心する・・・・
僕のすべてを包み込む、君の大きな手
まるで魔法のように
僕は心が癒されて、君のことが、また好きになっていく。
手塚・・・・大好きだよ?
たとえ・・・離れていても・・・・・・・
「んっ・・・・?」
手塚のにおい・・・感触がする・・・・
幸せだな・・・・
永遠に時が止まればいいのにと・・・・
ささやかな願い
でも、そんなの叶うはずもなく・・・・
だから、少しでもココに長くいたいと・・・
そう思ってしまうんだ。
「おはよう、不二。」
「ん〜っ?」
「低血圧なのは、相変わらずのようだな。・・・朝だぞ?・・・ゆっくり起きろ。」
「・・・・・・。」
目を開けると・・・しばらく頭がクラクラとしている。
そんなのいつものことだけど・・・
このことを知るものは少ない。
「・・・随分と眠たそうな顔だな?・・・俺に抱きついて寝るからだぞ?・・・肩が凝っただろ?」
「えっ・・・・?」
ガバっと起き上がり、クラっと倒れそうになる僕を、手塚はすかさずキャッチする。
視線と視線が交差する。
唇に感じる君のあたたかさ。
僕は、手塚の首に腕を巻き、そのキスを十分に受止める。
「不二・・・。」
「あぁ・・・ごめん、昨日、あのまま寝ちゃったみたいだね・・・僕。」
「気持ち良さそうにしていたから・・・そのままにしておいたんだ。」
「うん。・・・・すごく幸せだった。」
「・・・・・・。」
「あ、今のキスもすっごく幸せだったよ?」
手塚が、優しく微笑むのがわかった。
君のその笑顔・・・大好き。
君の前でしか、素直になれない僕
僕の前でしか、そんな笑顔を見せない君
すごくすごく幸せだから・・・・
ずっと君のそばにいるよ。
塚不二の場合・・・
不二は「強がる」という観念がない気がする。
彼の前では、素直に、素直に・・・・
手塚は、いつもと変わらず堅いけど、ちょっと天然。
彼の前では、気が抜けて幸せで・・・笑顔、笑顔。
こんな甘〜い文章も、たまにはいいよね♪